貿易実務の講師をやってみた5年間
講師を始めたきっかけって?
なぜ貿易実務講師をやりはじめたのか? 簡単に言うと当時勤めていた会社からリストラされたからです。 提示された退職勧奨制度に乗った(乗せられた?)とき、この先この年で雇ってくれる会社はあるだろうか? 多少の退職金でいつまで仕事探しを続けられるだろうか・・・と不安だらけでした。 元々その会社には転職で入社して7年ほど勤めただけなので退職金は生活を半年維持できる程度でした、再就職活動をしてるあいだに住宅ローンの支払いが滞れば家を売ることになってしまうので焦るばかりでした。 そのような不安や焦り、また退職勧奨された悔しさを忘れるためにとりあえずバイトでもいいから働くことにして、どうせなら将来に繋がるバイトを探すことにしました。
住宅ローンが・・・
できる限り時給が良く、再就職のための良い経験になるものを探したところ、近場の外語専門学校で夜間の「貿易実務概論」講師の求人があったので思い切って応募しました。 なぜ ”思い切って” かと言うと私は以前の会社で新人教育をしたことはありましたが、基本的にはひたすらだまって書類を作るのが仕事だったので人前で講義をするなんてとても考えられなかったからです。 でももしうまくいけばその専門学校に就職できるんじゃないかと思って面接を受けました。 試しに模擬講義をやってみて全然ダメダメでしたが、幸い人手不足だったようで無事採用されました。 それから夜に2時間、週2回の講座を半年ほど担当させていただくことになりました。
いざ講師スタート!
初めての講師業のため開講まであまりに不安だったので専門学校の教頭先生に、「講座をうまくやるコツはなんでしょうか?」と聞いてみました。そうしたら「とにかく十分準備をすることだけ」と言われました。 話し方や教える技術でも聞けるかと期待していたので少々拍子抜けしましたが、素人の私にできることはそれしかないので講義のレジュメ作成に全力を注いで、開講時のあいさつのセリフまで文章にして何度も脳内講座を開いて練習しました。 生徒は学生で少人数でしたが始まる前は緊張感で逃げ出したくなる程です、しかし教壇に立てばもうやるしかないので準備したことをただ一方的に、でもひたすら誠実に伝えることだけが私にできることでした。その結果半年後に生徒の一人が学校で初めて一発で貿易実務試験の中級に合格しました、その生徒から「先生のおかげです!」と言われたときは初めて人の役に立つ快感を知りました。 しかし結局その学校に就職することはできず、ちょうどそのころ派遣の仕事を得たので講師の仕事に手応えを感じつつも中断しました。
より専門的な講師に!
その後、派遣の仕事を続けましたが、収入的に幼い子供がいる家庭を維持するのが難しく、退職金も尽きたので加入していた生命保険からお金を借りて、将来の保険給付金を食いつぶす日々がしばらく続きます、このままでは借金が増える一方なので派遣の仕事をしながら再びバイトを探しました。 するとちょうど貿易関連資格試験の添削のバイト募集があり、応募して面接したところ資格試験講座の講師の誘いを受けました。 業界でメジャーな資格試験なので二の足を踏みましたが、他のバイトより圧倒的に時給が良く本業と兼業できるスケジュールだったので引き受けました。 それからいつのまにか5年程、何十回と講義を重ねましたが毎回講義を始める前の緊張感は変わりません、今でも講座開始30分くらいは口がカラカラになります、その緊張を超えて第一声を発するにはやはり「十分な事前準備」と、借金返済のため「やらない選択肢は無い!」と自分に言い聞かせることでした。
するどい質問をもらって頭が真っ白に
なることもしょっちゅう・・・
これからも講師として。
というわけで私は講師を目指したのではなく、再就職に役に立ちそうなバイトの中で一番時給が高かったから生活の為にやってみたのが正直なところです。 しかし受講者に分かり易く教えたくて毎回講義が終わると一人反省会を開き、更に知識を深めて講義に改良を重ねたことは本業にもとても役に立ちましたし、現在就業している商社でも講師業の経験が評価されて採用されました。 また私は昔から会社の仕事に対して一人でガンバリ過ぎて自滅するタイプ(笑)だったのですが、自分を商材とする自営業者になることで気持ちに余裕が出て働きやすくなりました。 そんな訳で講師という仕事は本業にも良い影響をもたらすので私のライフワークになりそうです。